新潟の市民映画館、シネ・ウインド
新潟市には、「市民映画館」なるものがあることをご存知でしょうか。あまり他に例がないようですが、昨日も今日も明日も上映している映画館です。料金は通常と同じ1800円、各種条件によっては割引価格で入場できます。
映画がデジタル化したとほぼ同時に、「シネコン」型の映画館が増え、従来のスタイルで営業をしている劇場は軒並みつぶれて行きました。きっとこうなるだろう、と思われた通りの姿を見て、映画が大好きな方は最後の望みをシネ・ウィンドにかけたのでした。
例えば音響設備がどうこう、スクリーンサイズが云々、そういうものは新しければ新しいほど良いものです。しかし映画とは、決してそれだけでは言い切れないものを包括して現在も世にある気がしてなりません。
作品がどういうものか。面白いのか、楽しいのか、また文化的に重要なものか、意義深いものか。シネ・ウインドにかかる映画には、そういった選考基準が見られます。
ハリウッドで興行収入がいくらとか、日本最大級の製作費だとか、それが大事な映画もこの世にはありますし、事実迫力や面白さは素晴らしいものです。しかしシネ・ウインドにおいて映画を楽しむことを考えた時、大事なものが何か、訴えを聞く立場にもなることがあります。
新潟と言う文化都市で
かつて江戸をしのぐ人口を抱えた街、新潟には、深い文化の名残が各所で見られます。現在も残る歴史的な建物や地名、日本全国へ飛び立った偉人たちの源流を持っている、とも言えます。残念ながら現在は、その他の地方都市の中に納まっているものの、昔からおいしいお米がたくさんとれたからかも知れませんね、世界一の都市人口を持っていた大都市だったのです。
人が集うところに文化が生まれます。新潟、と言う文化は洗練されて行きました。
そんな文化都市に、市民映画館と言うあまりないスタイルはどのようにして生まれたのでしょうか。
1985年、有限会社新潟市民映画館と新潟・市民映画館鑑賞会の総称、また劇場名として新潟・市民映画館シネ・ウインドが開館しました。会員制度を持った映画館です。齋藤正行氏が代表を務め、一口1万円を募ってスタートしました。会員は会報の発刊を受けるほか、運営に関する活動への参加、上映作品の選定も行うことができます。
会員以外の入場は通常の劇場と同じく料金を支払うことで可能、入場料は運営費に充てられています。
映画や俳優に関する資料、書籍、パンフレットも豊富に管理しており、会員には貸し出しもあるようです。
大劇場じゃないからできること
映像が安価になったのは、パソコンが普及したからでしょうか。動画作品が無料で見られる今、映画は難破寸前の船のように危ういのかも知れません。しかしそんな中でも、少額の資金をやりくりし、どうしても作りたい、伝えたいという思いから作られた映画は世界中にたくさん生まれているようです。
シネ・ウインドにはそう言った作品が自然に集まってきているのかも知れません。シネ・ウインドの代表は、どこの国の作品か、誰が作ったのか、また内容など些細な問題から上映されないこともある、悲しい状況が世界中で見られているとのこと。もしそういう作品だとしても、もしかしたらシネ・ウインドではかけられるかも知れない、とおっしゃいます。会員が「見るべきだ、見せるべきだ」と決意した作品を、上映している劇場だからにほかなりません。
新潟市にはそんな映画館があることを、日本中に知ってもらいたいのです。そして月に一度、年に一度、生涯に一度でも、足を運んで頂きたいのです。
「表現の自由」が危ういのかも知れません。世界的に、揺れ動いている「自由」と言うものの価値が、何なのかを体感するためにも、お勧めします。
映画ファンはもちろん、すべての方へ。
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